HOME > トピックス > エキリーブルの掲載記事(No.5 夢が叶うドラゴン)
トピックス

エキリーブルの掲載記事

エキリーブル MJコンテス「エキリーブル」(こころ+バランス=幸せ)
エキリーブルとは心と体のバランスを主眼に、WFP(国連世界食糧計画)の活動や子供の教育問題
そしてオリンピック誘致に至るまで現在身の回りにある課題をテーマに編集されるタウン誌です。
創刊よりSpice of life(人生の香辛料)のタイトルで連載しておりますのでご紹介させていただきます。

※画像をクリックして頂くと、エキリーブル発行会社
 「MJコンテス」さんのサイトをご覧頂けます。

加賀蒔絵(かがまきえ)
ボヴェ前回はヨーロッパを代表する陶磁器「マイセン」について書いてみましたが、今回は 日本の代表的伝統工芸である「蒔絵」についてお話しようと思います。 「蒔絵」は遥か昔、飛鳥の時代に遡る日本古来の漆芸技法です。漆で絵や文様を描き、それが乾かないうちに金・銀・スズ等の粉を蒔いて文様を形どった後に更に漆を塗ります。漆が接着剤の役目も果たすのです。そして、よく乾かした後炭で表面を研磨する、こんな工程を重ねながら製作されていくのが「蒔絵」です。金属の薄板を張り合わせる平文(ひょうもん)や貝を薄く切り貼り付ける螺鈿(らでん)が中国をその起源とするのに対し、「蒔絵」は日本独自の技法なのです。
その中、大名文化を色濃く残す優美で風格のある「加賀蒔絵」は、加賀百万石(現在の石川県  金沢市)3代目藩主前田利常の美術工芸振興政策によるところが大きいとされています。 当時、幕府の厳しい監視の目を逃れ藩の財政を維持するためには、武力ではなく美術工芸品 に替えて財産を蓄える必要があったのでしょう。 現在でも、その伝統は加賀蒔絵で描かれた重箱が嫁入り道具の一つとなり、家の財産として 受け伝えられているようです。

蒔絵は蒔く粉の種類、工程から大きくは3種類に分類されます。実際はそれぞれの技法を 併用したさまざまな製作方法があるのですが。

「研出蒔絵(とぎだしまきえ)」
最も古典的な技法で、まだ蒔く金銀粉の粒子が粗かった時代に多く用いられました。 金や銀の粉を蒔いた後、器全体に漆を塗り、乾燥させた後に炭で表面を研磨して下の蒔絵を出す方法です。平面的な作風が特徴です。

「平蒔絵(ひらまきえ)」
漆で文様を描き、金銀粉を蒔いた後に文様の部分だけに漆をして、研磨する方法です。 器全体に漆を塗りつぶさないのが特徴です。粉が細かいため絵や文様等を繊細に表現することが可能です。

「高蒔絵(たかまきえ)」
文様部分を漆、炭粉、錆などを使って高く盛り上げ、その上に漆を塗り金粉等を蒔いて立体感を出します。蒔絵の技法の中でも更に高度な技術が必要で、平面的なヨーロッパ のミニアチュールとは異なり、モチーフが飛び出すような迫力があります。

以前、加賀の著名な蒔絵師さんをお招きして蒔絵の実演をしていただいたことがありました。 その蒔絵師さんは時計の文字盤に高蒔絵を施すことが出来る日本でも数少ない人物です。 近頃、万年筆や小物に蒔絵が施された物は珍しくはありませんが、どんなに熟練した蒔絵師 でも時計の文字盤に蒔絵をするとなると話は別です。なぜなら、時計の針の動きを妨げないよう にするためには、文字盤の厚みをわずか0.3mm以内に抑えなければならないからです。 高蒔絵によりモチーフが飛び出すような躍動感ある文字盤を製作するためには、常にルーペを のぞきこみながら厚みとの限界に挑戦していかなければなりません。そして、その工程を何度も 繰り返すことにより繊細で重厚な描写がはじめて可能となるのです。 半年もの歳月をかけすべて手作業で作られた「蒔絵」文字盤の時計は、ただ単に時を知らせる 道具にとどまらず、世界に誇れる日本の最高芸術を常に身に着けられるこの上ない満足を得る ことが出来るでしょう。